王子ホールディングスは、微細粒子の精密塗工技術を応用した新規製造技術によって、正面輝度がフラットな基板上に作製したLEDと比較し2倍以上となるLED向けサファイア基板(PSS)の製造技術を確立しましたのでお知らせします。
1. 新規開発の微細構造つきサファイア基板の特長
LED用サファイア基板上に微細凹凸構造を形成し、光を効率よく取り出す技術は広く用いられており、このようなサファイア基板はPSS(Patterned Sapphire Substrate)と呼ばれます。
PSS構造有り無しによるLED光取り出しの概念図
当社は、微細粒子の精密塗工技術を応用する手法により、全面に微細凹凸を形成したサファイア基板(PSS)を量産する技術を開発し、サンプル出荷を開始します。 新規開発の技術で製造したPSSは、約3マイクロメートルから、これまでの技術では作製が困難であった約200ナノメートル(1ナノメートル=百万分の1mm)までの範囲で微細凹凸構造のピッチを広範囲で制御でき、円錐型や釣鐘型、あるいはドーム型等、様々な形状を自在の大きさで形成することが可能です。また、LED生産ラインの最大サイズである径6インチウエハにも対応できます。新規開発のPSSを用いたLED素子は、波長385ナノメートルにおいて、正面輝度2.4 倍、全光束1.8倍の出力向上(対平坦基板/当社調べ)、従来PSS製品と比較しても20%程度の正面輝度向上(当社調べ)が確認されています。
PSS構造有り無しによるLED点灯比較
PSS構造あり
PSS構造なし
PSSの最適構造はLEDの発光波長や素子構成によって左右されます。新規開発のPSSは微細凹凸構造のピッチや形状を自由にコントロールできるため、よりきめ細かい最適なパターン設計が可能となります。
(図1および図2に、サブミクロンピッチのPSSの作製例(SEM像)を示します。)
図1. 新規開発したPSSの作製例(ピッチ:400nm、アスペクト比:0.64)
図2. 新規開発したPSSの作製例(ピッチ:200nm、アスペクト比:0.85)
さらに、新規開発のPSSでは、LED工程中の成膜品質を高められると考えられる数百ナノメートルピッチの微細構造体と、LED素子内部の光取り出しに有効な数マイクロメートルピッチの微細構造体を組み合わせた「複合構造体」を作製することが可能です。
(図3および図4に、複合構造型PSSの作成例(SEM)画像を示します。)
図3. 新規開発した複合構造型PSSの作製例(ピッチ:400nm/3µnm、円錐)
図4. 新規開発した複合構造型PSSの作製例(ピッチ400nm/3µm、円錐台)
これにより、更にLED素子内部の光を効率よく取り出すことができる様になります。
以上のように、簡便な精密塗工技術を応用し新規開発したPSSは、LED素子の更なる高輝度化を達成できる画期的な技術です。
2. 今後の予定
2014年3月 4日~7日 「第5回 LED Next Stage 2014」に出展し、本技術を紹介の予定 >>> 出展概要
2014年3月17日~20日 第61回応用物理学会春季学術講演会で発表予定
2014年4月からサンプル提供を開始し、2016年度の製品化を目指します。
本件に関するお問合せ先
王子ホールディングス株式会社 新事業・新製品開発センター
センター長 奥谷岳人、 グループマネジャー 川島義晴
TEL:03-3563-4789
email:hd-newbiz@oji-gr.com